研究概要 |
統合失調症患者に見出した変異型α7ニコチン受容体(423番目のGlyがSerに変異した受容体:G423S)の脱感作特性の変化を解明するため、アフリカツメガエル卵母細胞にα7-G423S受容体を発現させ、アセチルコリン誘発電流を解析した。その結果、プロテインキナーゼC(PKC)活性化剤存在下でα7アゴニストのコリンを持続的に投与すると、正常型α7ニコチン受容体に比し、変異型受容体では脱感作が亢進することを明らかにした。従って、G423S変異に伴いPKCによるリン酸化を受けると、脱感作が亢進し、脳機能障害の一因になると結論できた。 一方、機能が未知のヒトα7ニコチン受容体重複遺伝子産物(dup-α7)をα7ニコチン受容体と共に卵母細胞およびヒト神経芽腫細胞SH-SY5Yに強発現させたところ、タンパク質複合体として免疫共沈降された。しかもdup-α7発現時には、α7ニコチン受容体の活性が有意に抑制された。従って、統合失調症などの神経疾患におけるα7ニコチン受容体の活性低下にdup-α7受容体が関与する可能性が考えられた。 また神経細胞においては、α7ニコチン受容体を長時間アゴニストで刺激すると、脱感作だけでなく受容体数の増加が認められるが、同様の増加が非神経細胞の血管平滑筋細胞においても生じることを初めて実証した。 さらにニコチン受容体を発現させた卵母細胞を用いて、新たに構造決定された数種類の毒ガエルアルカロイドの効果を電気生理学的に検討した結果、6,7-dehydro-5,8-disubstituted indolizidine 207Eおよび179がα7ニコチン受容体を選択的に抑制することを見出した。 このように、ヒトα7ニコチン受容体の機能低下を引き起こす遺伝子変異および重複遺伝子産物の影響を明らかにし、さらに中枢神経疾患の治療薬開発に有用な化合物を得た。
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