以前の我々の報告で炎症に関連の深い転写因子NF-κBの抑制によりシクロスポリンやタクロリムスなどのカルシニューリン阻害薬長期投与で生じた腎間質の炎症および線維化が著しく軽減されることを示した。腎間質における炎症反応の存在はカルシニューリン阻害薬による腎線維化に特徴的なものではなく様々な要因による腎間質線維化に共通するものである。これらの炎症を抑制することにより種々の病態における腎間質の線維化が抑制された。すなわち、尿毒素物質の吸着薬投与によりNF-κB活性化と腎間質の炎症が抑制されることにより腎亜全摘モデルにおいて腎間質の線維化が抑制された。またcurcuminは尿管閉塞に伴う腎間質の炎症反応を抑制することにより腎線維化を抑制した。この機序にNF-kBの抑制が関与することを示した。NF-kBの下流としてMCP-1の発現とそれに伴うマクロファージの浸潤がこれらの薬剤の作用機序として重要と考えられた。次に低分子G蛋白Rhoの下流に存在するRho-kinaseの炎症への関与が知られるので、Rho-kinase阻害薬を用い、タクロリムスおよび尿管閉塞における腎間質の炎症と線維化に対する影響を検討した。Rho-kinase阻害薬のfasudilは尿管閉塞における腎間質の炎症反応と線維化を軽度抑制したがタクロリムスにおける病変に対する抑制効果はなかった。このことから、Rho-kinase系の関与は腎線維化に共通するものではない可能性が示唆された。
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