研究課題
基盤研究(C)
ビールホップの苦味成分humuloneは、鶏卵漿尿膜の測定系で濃度依存的に強く血管新生を阻害した。我々はhumuloneがシクロオキゲナーゼ-2(COX-2)の強い酵素活性の阻害と核内転写因子NF kappaBを介する最強の転写活性の阻害(IC50:30nM)を同時に持つことを既に明らかにしていたので、血管新生阻害に対しどちらの活性がより強く担っているかを検討した。その結果、humuloneの血管新生阻害活性は両方の阻害活性に依存するが、COX-2の転写活性の阻害がより強く寄与していることが明らかになった。次に、動物種あるいは由来器官が異なる種種の血管内皮細胞に対する増殖阻害効果について詳細に検討し、bFGFとVEGFの血管新生促進因子および血清によって誘導される全ての内皮細胞の増殖に対し、Humuloneが強い抑制効果を示すことを明らかにした。管腔形成に対しても同様の結果が得られた。一方、さらに強力な阻害物質の探索のため、ビールホップから精製したhumuloneの関連物質、合成したhumuloneの誘導体を用いて、in vivoのassay系である鶏卵漿尿膜法によって血管新生阻害作用を確認した結果、humuloneに最も強い阻害効果が認められた。このため、humuloneを大量に合成し、腫瘍細胞が誘導する血管新生に対する阻害作用を検討した結果、humuloneは比較的少量の腹腔内投与によって、Lewis lung carcinoma(LLC)細胞がマウスの背部皮下に誘発する血管新生を強く阻害した。この実験によりin vivoの効果が確認されたので、次に抗腫瘍作用を検討した。LLC細胞の皮下移植によるマウス肺への自然転移に対し、腹腔内に投与したhumuloneは弱いながらも阻害活性を示した。これらより、humuloneは血管新生阻害を機序とするがん治療剤への応用の可能性が示唆された。
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