研究概要 |
1)フィブリノゲン(Fbg)γ鎖D領域の立体構造の維持におけるγ鎖319Asn,320Aspの役割について研究した。 従来γ鎖319Asn,320Aspの2アミノ酸を欠損する異常症例においては、機能異常の著しい低下のみが注目されていたが、今回われわれが実施報告したCHO細胞における正常γ鎖と異常γ鎖の同時発現細胞における注意深い研究により、γ鎖319Asn,320Aspの2アミノ酸を欠損する症例においては、異常Fbgの細胞内での組み立てはほぼ正常であるにもかかわらず、細胞からの分泌が低下していることを証明した。これらの結果より、γ鎖D領域の立体構造の異常はFbgの機能だけでなく、蛋白の分泌機序に影響を及ぼすことが明らかになった。(S.Kani et al.の研究論文) 2)Fbgの組み立て・分泌におけるγ鎖387Ile残基の役割について研究した。 我々はすでにFbgの組み立てと分泌にγ鎖387残基が重要な働きをすることを報告した。そこで今回γ鎖387IleをArg, Leu,Met,Ala,Aspに置換させた実験を行い、γ鎖387残基の性質あるいはアミノ酸の存在が重要であるのかを検討した。この結果、前4種のFbgの組み立てと分泌には低下は観察されなかったが、Aspにおいては著しい低下が観察された。このことから、γ鎖387番のアミノ酸の性質およびその変異によってもたらされる388番以降411番までのアミノ酸の立体構造の変化によりFbgの組み立てと分泌が影響されることが明らかになった。さらに、分泌された4種類のFbgの機能解析おいては、γ鎖387番アミノ酸の性質およびその変異による388番以降411番までのアミノ酸の立体構造の変化は、フィブリン繊維が太くなる性質と、凝固第XIII因子によるγ鎖388Gluとγ鎖407Lysの架橋結合反応の起こりやすさにも影響することが明らかになった。(論文はBLOODに投稿中) 3)Fbgの組み立て・分泌におけるBβ455Arg役割について研究した。 γ鎖387Ile残基に相当するBβ鎖の残基は455Argであるこの残基が存在しないとFbgの組み立て・分泌が起こらないことが明らかになった。すなわち、各細胞での合成量と分泌量は、それぞれ正常223±141、331±236、Bβ鎖455残基109±31、160±38、Bβ鎖454残基10±5、<20(単位ng/ml)であった。
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