変異型第XI因子(FXIW599R)の分泌異常機構について検討した。 また、第XI因子分子の結晶構造のdatabaseを用いてCPグラフィックスによる変異型第XI因子の構造を検索した。第XI因子599位はC-末端のα-ヘリックスに位置し、ヒト以外にウサギ、マウス、ウシ、ラットの第XI因子に保存され、細胞分泌に構造上重要なアミノ酸であることが推定した。疎水性のW599が陽性荷電したRに置換することによってαヘリックスの外側にある側鎖に向かって新しい側鎖をつくり、その周りの構造が一部変化した。 正常肝臓由来のcDNAより制限酵素部位を付加したFXI cDNAを作成した。 患者に見い出したArgを含め、wild typeのFXI分子599位のTrpと異なった性状を有するGly、Glu、Pheに各々置換した変異型FXIを発現させるためにFXI599位変異型遺伝子/pcDNA3.1Zeoおよび野生型FXI遺伝子/pcDNA3.1Zeoを作成した。 これらのFXI遺伝子発現ベクター用いてCOS-1細胞で野生型および変異型FXIを一過性発現させた。変異型FXIは培養液中には分泌しなかったが細胞中のFXIagは野生型の60〜70%であった。また、CHO-K1による安定株を確立した。 Gene transcriptionおよびmRNA processingを確認するため、mRNAを定量したが、変異型は野生型FXIとほとんど差異はなかった。 SDS-PAGEで変異型FXIは野生型と同様に160Kdaに1本のバンドを出現した。Metabolic labeling studiesでFXIArg599は野生型に比べて、生合成が遅延するものと考えられた。 Tunicamycin、Castanosperin、Nojirimycin阻害は野生型FXIとほとんど差異はなかった。 、Lactacystin、Leupeptin阻害は野生型FXIとほとんど差異はなかったがBerfeldin A野生型FXIに比して減少した。
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