無侵襲ヘモグロビン測定装置(アストリム)を用いて、持続モニタリングの可能性について検討することを目的として、測定に影響を及ぼす生体条件等の効果や自己血貯血時への応用を中心に検討した。 1、赤血球形態等の変化による影響 洗浄末梢血より破砕赤血球を作成し、アストリムで測定した値と血球計数器の成績を比較した。0.7〜18%の破砕赤血球混入検体ではアストリム測定に影響がなかった。さらに凍結融解処理により溶血を来すと、光散乱成分の減少によりアストリムではやや低値を示す傾向がみられた。 一方、低張条件で作成した球状赤血球では、吸光度の増加により真の値に比し高値を示した。 2、薬剤の影響 重症症例で使用され、光散乱に影響を及ぼす可能性のある薬剤の洗浄赤血球への添加により測定に及ぼす影響を検討した。検討薬剤中、脂肪乳剤は脂肪粒子による散乱のためアストリムでは高値を呈したが、10%添加により1g/dLの変化であるため臨床応用には問題ないと考えられた。 3、手首装着型プローブの開発 これまでの透過型原理による測定では24時間のモニターが困難であるため、手首等に適応可能な反射型原理を開発した。 4.自己血貯血前のヘモグロビン値推移の推測への応用 52症例122採血について、貯血開始前のアストリム値と採血開始直後の検体による計測値とを比較検討した。122採血全体では無侵襲測定Hb(NINV-Hb)と計数器Hb(TR-Hb)の相関はr=0.527、p<0.0001であった。またNINV-Hb/TR-Hb比はMCVやRDWと関連しなかった。8症例では1回目の測定でNINV-HbとTR-Hbが2.1以上ひらいており、無侵襲測定器での観察が困難な症例と考えられた。残り44症例の2回目以降の採血においてNINV-Hbが12以上であった49回で、TR-Hbが10.6(NINV-Hb=13)であった1回を除き、他はすべて11g/dL以上であった。以上より無侵襲ヘモグロビン測定装置の使用により、2回目以降の自己血貯血における検査採血操作を省略することが可能と考えられた。
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