研究概要 |
(1)結核菌細胞集団の多様性解析:Middlebrook 7Hll寒天培地に喀痰検体を直接接種した平板上に形成された結核菌コロニーを個々に単離して薬剤感受性と制限酵素切断断片解析(RFLP)を行った。その結果、単一検体に由来する結核菌コロニーは個々に多様な薬剤感受性パターンを示す細胞集団であることが明らかになった。また、これらの菌集団は遺伝学的にも均一でなく、単離された菌コロニーのRFLPパターンは薬剤感受性パターンと必ずしも一致しなかった。 (2)薬剤耐性変異株の遺伝子解析:単離された薬剤耐性菌について、染色体遺伝子上の変異を解析した。その結果、pyrazinamide(PZA)耐性菌の77%ではpncA遺伝子にアミノ酸置換を伴う変異があり,変異パターンが同一のものはそのRFLPパターンも近似する傾向を示した。Rifampicin(RFP)については、最小発育阻止濃度(MIC)が0.06〜2.0μg/mlにある菌株のrpoβ遺伝子を解析したが、MIC 0.06μg/ml以下の菌株では変異は見られず、MIC 0.125μg/ml以上の菌株ではほとんどすべての菌株でアミノ酸置換を伴う変異が見い出された。 (3)多剤耐性結核菌における複数薬剤の併用効果:既に液体培地を用いる微量液体希釈法を開発したが、今回この試験技術を応用し、複数薬剤の効果をin vitroで解析することを試みた。常法のチェッカー・ボード法を3次元に展開し、RFPとisoniazide(INH)の組み合わせに、さらにキノロン剤を含む28種類の薬剤を個々の添加して3薬剤の組み合わせでの相互効果を検討した。その結果、9剤において3次元試験でのみ相乗効果が観察され、特に抗結核薬ではないfluoroquinolone、clarithromycinもRFP、INHとの組み合わせでは多剤耐性結核菌に対しても有効な相乗効果を示した。
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