研究課題
医薬品の体内動態を正確にしかも迅速に解析する方法の開発は、薬物治療を行う上で極め重要な診断技術である。特に、高齢者においては、代謝能が個々人で大きく変動するため、血中の薬物濃度測定(TDM)が必要とされている。現在、我が国は急速な高齢化が進行しつつあり、近い将来個々人に対する薬物治療をより適切に行う必要がある。すなわち、ベッドサイド診断や診療所においてテーラーメイド医療を行う時代が到来することが予想される。このような課題を解決するには、より簡単にしかもコンパクトな次世代型分析装置の開発が必要である。本年度の研究では、(1)マイクロチップ電気泳動法に用いたプラスチックチップのチャンネル内に、SDSコートにより発生させた電気浸透流(昨年度の研究により開発)を用いて、メトトレキサート、バンコマイシンなどの高速イムノアッセイの検討を行った。その結果、キャピラリー電気泳動での結果と異なり、標識抗原と抗体の電気泳動は観察されなかった。これは、チャンネ1ル内への試料の注入が、浸透流のみの力では達成できないことが分かった。そこで、次に標識抗原の標識物質として、DNAを選び、マイクロチップの分離をセルローズ誘導体による分子ふるい法で行った。(2)DNAとして、5'末端アミノ化λ-ファージDNA断片(500bp)をPCRにより調製した。次に抗原としてエストラジオール(E2)を選び、これをカルボキシメチルオキシムによりカルボン酸誘導体とし、さらにカルボジイミドを用いて活性エステル体として、DNAにラベル化した。(3)標識抗原の検出は、インターカレーション試薬エチジウムブロマイドによる蛍光法で行った。尚、分離に用いるマイクロチップ電気泳動は、プラスチックのチップを用い、電気泳動は検出側を陽極とする方法で行った。この方法により標識抗原の分離が確認された。現在、抗原抗体反応での検出を検討している。
すべて 2006
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Analytical Letters 39
ページ: 317-326
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