ナチュラルキラー細胞(NK細胞)のsialyl Lewis X(sLeX)結合レクチンの探索とその機能解析を行った。MHCクラスIが発現であり、sLeXの発現もみられない骨髄性白血病由来K562細胞にフコシトランスフェラーゼ3(FUT3)遺伝子をトランスフェクトし、限界希釈法により高sLeX発現K562細胞および高LeX発現K562細胞株を樹立した。報告されている全てのキラーレクチンレセプター(KLR)を発現しているNK細胞株KHYG細胞を用いて細胞傷害性を評価したところ、高sLeX発現K562細胞に対する細胞傷害性はK562wildの約2.5倍に亢進したが、高LeX発現K562細胞株はK562wildと同等であり、また、抗sLeX抗体処理によりK562wildと同レベルまで細胞傷害性が低下した。常血清中トランスフェリンの糖鎖(Nor-TF)は2本鎖複合型でsLeXを発現していないのに対して、肝癌由来のHepG2細胞は高分岐複合型糖鎖にsLeXを高発現するトランスフェリン(HepG2-TF)を分泌する。そこで、これらのTFをFITC標識し、KHYG細胞との結合性を解析したところ、HepG2-TFがNor-TFと比較して約2倍高い結合性を示した。このHepG2-TFのKHYG細胞に対する結合性は、抗CD94、抗NKG2D、抗NKG2Cおよび抗CD161抗体処理により低下したが、Nor-TFの結合性にはこれらの抗体は影響を与えなかった。単球系細胞由来のU937細胞にCD94およびNKG2D遺伝子をトランスフェクトしたU937-CD94およびU937-NKG2Dは、HepG2-TFの結合性が有意に増加したが、Nor-TFの結合性には影響を与えなかった。また、HepG2-TFあるいはNor-TFをプレート上に固相化してKHYG細胞を刺激したところ、HepG2-TFにより17kDaのタンパク質のチロシンリン酸化の亢進がみられた。以上の結果から、sLeXはKHYG上のレクチンレセプターを介して細胞傷害活性化シグナルを伝達する可能性が示唆された。(Biochim Biophys Acta印刷中)
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