研究課題
本研究は、トランスサイレチン(TTR)・アミロイドーシスを対象として、患者血清中およびアミロイド組織中のTTRの、分子内、分子間のデヒドロアラニンによる架橋の存在を証明し、架橋がアミロイドのベータシート形成の引き金となることを実証することを目的とした。これまでに、我々は、精製TTRあるいはヒト血清中TTRが酸化変性して、N末端から10番目のシステインに亜硫酸が結合した翻訳後修飾構造を見つけた。さらに、このシステインがグリシンに変化したもの及びその中間修飾構造のシステインがデヒドロアラニンに変化した形を見出した。変異TTRの多くはアミロイド原性であり、正常構造のTTRも老人性アミロイドーシスを引き起こすことが知られている。16年度、正常のTTRを弱アルカリ性でインキュベートし、システインがグリシン、デヒドロアラニンに変化することを示した。さらにTTRのシステイン周辺のアミノ酸配列に相当するペプチドSKCPLMVKを合成し同様の変化がおこることを示し平成16年度中に発表した。これらの変化は質量分析により質量数差より推定したが、加水分解の後アミノ酸分析を行った。その結果予想どおりのグリシンの増量は認められなかった。質量数が同じ異性体に変化している可能性が示唆された。またランチオニン(デヒドロアラニンとシステインの結合したアミノ酸、チオジアラニン)等の架橋アミノ酸の証明もできなかった。これらは通常アミノ酸ではないので、より詳細なアミノ酸分析が必要である。アミロイド組織から抽出したTTRはSDS-PAGE電気泳動でモノマーからテトラマーまで分布し還元剤でもモノマーにならない成分を認めた。これらのバンドのTOFMS分析は17年度の課題である。アミロイド以外のタンパク質を用いタンパク質の高感度質量分析に関する基礎技術の検討を行い準備が整った。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (6件)
Hemoglobin 29・1
ページ: 1-10
Journal of Chromatography B 806
ページ: 25-31
Rapid Communications in Mass Spectrometry 18
ページ: 995-1000
J Neurol Sci 218(1-2)
ページ: 79-83
Annals of Clinical Biochemistry 41
ページ: 157-159
Biochimica et Biophysica Acta 1698
ページ: 45-53