研究課題
トランスサイレチン(TTR)はアミロイド変性しやすい構造上の特徴を備えていると考えられている。我々は、TTRのN末端から10番目のシステインに亜硫酸が結合した分子、およびシステインがグリシンに変化した分子を始めて報告し、さらに、システインがSS結合によりシスチンを形成し、β脱離によってデヒドロアラニンに変化することを昨年までに明らかにした。今年度は、精製TTR、正常血清TTRの構造変化を、SDSポリアクリルアミド電気泳動(PAGE)、CBB染色、銀染色、ウエスタンブロット、及びマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI-TOFMS)により分析した。精製TTRの還元変性条件下でのSDS-PAGE解析で、正常のモノマーに加え、ダイマー及び60kDa、45kDa、28kDa、20kDaの複数のTTRバンドを検出した。血清TTR(ウエスタンブロット)では、これに加え、55kDaにバンドを認めた。還元変性条件下のSDS-PAGEで、ポリマーは、いずれも、10%以上存在するが、MALDI-TOFMS分析ではモノマーのみ検出された。MALDIの溶媒は強酸性(0.1%トリフルオロ酢酸)で、SDSは入っていない。TTRはSDS、尿素などの変性条件下でのみ、非共有結合によるポリマーを形成しやすいのであろう。グアニジン変性下で、各々ポリマーを十分量分離して、その成分について上記の分析を進めようとしているがまだ準備段階である。またTTR以外のタンパク質についても分析したが、ポリマー形成傾向はTTRが最も強かった。TTRに関連するタンパク質として、スーパーオキシドジスムターゼ、ヘモグロビンの構造変化についても質量分析により調べた。多数試料の分析を行ったが、TTRのようなシステインの変化は認められなかった。
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Neurology 65・12
ページ: 1954-1957
Mass Spectrometry Reviews (in press)