研究概要 |
本研究は、Na^+,K^+-ATPaseの生体内モジュレーターである内因性ジギタリス様物質の病態検査学的解析の一環である。本年度は、ヒト唾液およびこれまでの申請者らの研究で明らかにしてきた内因性ジギタリス様物質の産生分泌臓器と考えられる副腎髄質と副腎皮質をも考慮し、ラット副腎髄質由来の細胞株のPC12とマウス副腎皮質由来の細胞株Y-1の両細胞培養系を用いて、新たに発見したブファリン異性体を含むブファジエノライド類を免疫化学的かつ質量分析的に解析できた。まず、すでに報告しているマリノブファギンの2水素付加体であるテロシノブファギンなど様々なブファジエノライドを検出する能力を有するモノクローナル抗体を作成し、上記2種細胞培養上清に存在するブファジエノライドを検索した所、ブファリン/ブファリン異性体が存在することを認め、さらにテロシノブファギンのアルギニン-スベロイル-エステルを新たに発見した。これらの培養系での結果は血清を含む培地はもちろん無血清培地でも得られることを確認した。さらに本物質は本研究のターゲットである唾液中にも存在した。さて、本物質の性質について文献的に検索すると、ガマ類の唾液腺や皮膚の毒腺に大量に含まれ、エステル結合が切断したテロシノブファギンの前駆物質/分泌貯蔵物質との考え方ができる。これらの結果から、ヒト唾液や血液中には、従来、我々や米国のBagrovが発見同定してきたよりさらに多種類のブファジエノライドが複数存在すること、これらの物質の分泌・合成には副腎髄質あるいは皮質が関わっていることが今年度明らかとなった。さらにこれらの考え方周辺に関する最近の知見をまとめたNa^+,K^+-ATPaseの生体内モジュレーターと病態に関する総論を発表した(11に記載)。
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