本研究は、水・電解質代謝に重要なモデュレーターとして働くEDLFが水分代謝と関係する唾液中に含まれるブファリン異性体の発見に端を発したものである。ブファリンはブファディエノライド類に属し、ブファリン異性体がヒト唾液中に含まれることを、LC/MSにより明らかにした。本物質はガマ由来のamthenticブファリンとは明らかに異なる溶出時間をLC上で示す一方、MS/MS分析ではauthenticブファリンと全く同一のフラグメント構造を示し、ブファリンの異性体であることを強く示唆した。このヒト唾液中での発見は国際動脈硬化学会において発表し高い評価を受けたが、唾液ブファリン収量が極めて僅かであり、NMRなど構造化学的にauthenticブファリンと異同を明らかにするに至らなかった その研究過程で発見したヒト血液中に含まれる新たなE肌Fはマリノブファゲニンの2水素付加体構造、テロシノブファギンであることを、さらにヒト血液中にはマリノブファゲニンとともに存在し、量的には多く含まれることが明らかとなった。これは、哺乳類においてブファディエノライドの構造類似物質/前駆・代謝物質がともに存在することを世界ではじめて示した研究成果である。さらに病態との関連ついて研究を進め、腎不全で透析治療を受けている患者ではテロシノブファギン血中濃度が明らかに上昇していることを認めた。 一方、ジギタリス関連臨床に関係する薬毒物検査について広島大学の屋敷幹夫と共同で臨床検査誌に薬毒物分析の特集を10ヶ月にわたり組み上げた。さらに2種類のEDLFの他方であるカルデノライドで最初にEDLFと考えられたウアバインが動脈血管内皮細胞における一酸化窒素生成や細胞内カルシウム動員に極めて低い濃度で有効であることを明らかにし、論文を発表した。 これらの研究は、マリノブフォトキシンがヒトおよびラットおよび副腎培養細胞系で存在することを世界で始めて証明することができた研究に至る重要な礎となるものであった。
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