研究課題
MK-1抗原は、本医学部で発見した腫瘍関連抗原であるが、17-1A、KSA、Ep-CAMあるいはGA773-2抗原等とも呼ばれる糖タンパクであることも明らかとなってきた。MK-1は、多くの上皮系癌細胞表面で発現が著しく増加する腫瘍関連抗原であり、この抗原に対するマウスモノクローナル抗体(mouse monoclonal antibody; MmAb)は大腸癌の治療にも利用され始めている。我々はこれまで、MK-1に対するMmAbを作製し、さらにその遺伝子を用いてマウス/ヒトキメラ抗体や単鎖抗体(single-chain variable fragmented antibody: scFv)抗体を作製し、in vitroにおける研究や担癌マウスを利用したin vivoでの実験で、癌の治療に有用であることを示してきた。本研究で我々は、ヒト抗体遺伝子を含む染色体を導入したKMマウスを用い、MK-1抗原に対する完全なヒトモノクローナル抗体(human monoclonal antibody: HmAb)を作製した。MK-1は、カイコ幼虫に発現させ、体液より精製した組み換えMK-1タンパクを用いた。MK-1抗原で免疫したKMマウスの脾細胞とマウスミエローマ細胞P3-U1をPEGで融合させ、ELISAにより抗MK-1抗体産生ハイブリドーマクローンをスクリーニングした。得られたクローンの産生するHmAbをヌードマウス腹水より精製し、その性状を解析した。抗MK-1 HmAbの抗腫瘍効果は、MK-1を発現しているヒトの胃癌細胞であるMKN-74細胞を標的としたin vitroでの補体依存性細胞障害活性(complement-dependent cytotoxicity: CDC)と抗体依存性細胞障害活性(antibody-dependent cell mediated cytotoxicity: ADCC)により調べた。約2000個のハイブリドーマクローンをELISAによりスクリーニングした結果、約100個のMK-1反応性クローンが得られた。それらのほとんどはIgM抗体で、IgG抗体は2個のIgG4サブクラスが得られた。それらはどちらもMK-1のN端部分と反応することがわかった。IgGのHmAbは、MKN-74に対するCDC活性は示さなかったが、有意なADCC活性を示した。またIgMであるHmAbはCDC活性を示した。以上の結果から、今回新規に作製したMK-1に対するヒト型抗体とその単鎖抗体scFvは、癌の抗体療法に極めて有用であると考えられた。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (6件)
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