リン酸者エステル加水分解酵素であるアルカリ性ホスファターゼ(AP)は、生体内のあらゆる組織に分布しているが、これといった生体内基質が明らかになっていない。また、APの至適pHが10付近で、生理的pHとかけ離れたpHで反応することから、生体内では重要な生理作用を担っているとは考えがたい。しかしながら、APは特に、体外と体内の接触する部位において高活性で示している。胎盤でも極めて高活性で存在するが、胎盤は母体と胎児の設定の部位とも考えられる。そこで、生体防御因子として肺APをとらえ、一般的に体外から侵入してくる内毒素、リポ多糖(LPS)に対する効果を検討した。 LPSはリン酸エステル結合を有し、その切断により毒性が減弱されることは知られている。また、去痰薬であるアンブロキソールは、肺サーファクタント粒子の合成分泌を促進させる薬理作用をもつ。その肺サーファクタント粒子内にAPが高活性で局在する。ラット肺に対してアンブロキソール処理すると、肺サーファクタント粒子の上昇が再確認され、さらにin vivoでもin vitroにおいてもAP活性が誘導されることが再確認された。そこで、アンブロキソールを経口投与したラット気管内にLPSを暴露すると、アンブロキソール処理していないラットに比較して、血中LPS濃度が顕著に減少していた。同じ去痰薬でも肺サーファクタント粒子合成分泌促進作用の弱いブロムヘキシンでは、このアンブロキソールの効果は認められなかった。これらの結果は、体外から侵入するLPSをAPは基質として作用し、全身血中に移行するLPS量を減弱、すなわち、LPSの無毒化にAPが関与することを示唆するものと考えられた。
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