研究概要 |
硬骨魚類の側線は位置的には聴覚器下流に連続して存在するものの,音は認知されないとされており,水圧や流れを認知する末梢感覚器・神経であると考えられている。深部知覚を認識する感覚神経の存在は知られているが,側線神経は表在知覚が主でありながら,深部知覚との厳密な区別はないようにも思われる。側線神経は側線管の中に収納されウロコの発達にあわせて大きくなるものの形態は厳密に維持されている。この形態維持に骨芽細胞・破骨細胞が共役しており,アポトーシスを介する調節が行われていることを組織学的に見い出した。側線管周囲に骨芽細胞・破骨細胞が集中する理由を明らかにするために,サブトラクション法を用い側線ウロコに発現しており,通常ウロコに発現していないmRNAの同定を行った。この結果,ハエの羽根に切り込みをいれる遺伝子として発見されたnotchに相同性のあるmRNAや,アポトーシス誘導シグナルやアポトーシスカスケードに関わる酵素をコードすると考えられるmRNA或いは逆にアポトーシス抑制因子のmRNAなどが得られた。哺乳類と異なり,遺伝子配列が必ずしも知られていないために,これらmRNAの全長を得て,配列決定を行った。また,骨粗鬆症の予防・治療に有効であることが示唆されており,実際哺乳類培養細胞を用いた検討で骨芽細胞の増殖ではなく分化促進に作用する事を明らかにしたVitKにより,骨形成マーカーの一部はウロコにおいても同様の変動を示すことを見い出した。
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