研究概要 |
研究I 電子部品の製造業ラインを介入群6部署(47名)と対照群6部署(50名)に無作為に割り付けた。人事総務担当者に職場環境改善活動について研修を行った(2005年5月)のち,介入群の労働者に仕事のストレスと職場環境改善活動の意義についての研修が行った(2005年11.月)。自らの職場のストレス調査結果(2005年7月)等を使用したグループワーク1で抽出された改善項目を基に改善活動が行われた。2006年4月と8月,改善活動成果の確認とポジティブフィードバックを旨とする活動報告会が行われた。2006年8月の効果評価までの期間中,GHQ得点は対照群において増加していたが(p=.047),介入群において変化はなかった。仕事のパフォーマンス指標は対照群で悪化していた(p=.040)。介入群において得点は増加していたが統計的有意でなかった。反復測定による1元配置分散分析では,ジョブ・パフォーマンスの変化において群と時間との有意な交互作用が見られた(p=.048)。 研究II 民間の中核病院(600床)で介入群7病棟と対照群7病棟を無作為に割り付けた。看護部と各診療部の担当者が核になり,研究Iと同様の内容で従業員参加型の職場環境改善によるストレス対策が施行された。指標の評価は2005年と2006年の12月に,改善活動の報告会は4回開催された。期間中,全体で仕事要求度が増加していた。介入群の離職者(168人中24人:14.3%)は対照群(139人中28人:20.1%)に比して少なかったが統計学的有意ではなかった(p=0.173)。介入前後でデータの欠損のない者を解析したところ,抑うつ症状の得点(CES-D)は両群で低下していた。低下の程度は介入群で大きかったが,時間と群間での交互作用は認められなかった。参加者の62%が自己の職場の取り組みに積極的に取り組んだと評価した。改善活動を有意義とする反面,時間的負担と他スタッフ・部署の協力の取り付けが活動の障害として指摘された。 ストレス調査結果等を目安として労働者自らが行う職場環境改善が,製造業労働者の精神的健康度および仕事の能率向上に良好に作用することが示唆された。看護職においては圧倒的な業務量が改善活動の効果を凌駕していたことが伺われた。
|