不安定な足場条件での作業負担の客観的評価とそれに基づく作業改善の指標を得ることを目的に研究を行い、以下の結果を得た。 1.滑りやすい床面での歩行では、必要摩擦係数が低くなるような歩行姿勢になっていたが、それでも下肢の筋は共収縮を起こして全体的に筋活動が高まっていた。下肢負担の主観的評価では、滑りやすい床の歩行では、大腿部より下腿部に負担を感じていることがわかった。また、安全靴のような滑り止め効果のある靴での歩行時は筋電図が低く、筋負担の軽減に有効なことがわかった。 2.滑りやすい床条件での荷物運搬においては、荷物が大きく重い条件で筋活動が高まる傾向が認められた。荷物運搬作業においても、床条件に応じた作業姿勢で作業が行われることが分かった。足圧分布測定では、すべりやすい床ではつま先にかかる荷重割合が増え、踵の荷重割合が減少していた。主観的な負担感に関しては、保持する荷物の大きさや重さに大きく影響するのは上半身の負担感で、下肢の負担感は床の状態に影響される傾向がみられた。 3.床面が傾斜している場合の影響について検討するため、前後左右に傾いた床面で静止立位と足踏み作業を行った。その結果、傾斜角度が上がるほど、静止立位時、足踏み時いずれも筋電図が高くなること、左右横向きは上り方向や下り方向より筋電位が高くなる傾向があることなどが確認できた。エネルギー消費量も筋電位同様、傾斜角度が上がるとエネルギー消費量も増えており、その傾向は筋電図より強かった。主観的評価は筋電図と異なり、上り方向においては負担感が高く、左右方向静止立位時は上下方向より負担感が小さかった。 4.上記2つの実験データより、筋活動およびエネルギー消費量から不安定な足場条件での負担度の推定式を作成した。
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