がんと食事の関連は、発がん予防要因としても密接な関係が示唆されており、実際に食品中には様々な発がん予防因子が含まれていることが報告されているが、その発がん予防の作用機構については不明な点が多い。そこで発がん予防効果が報告されている食品成分に対して、その作用機構を明らかにする研究を実施した。 大豆に含まれるflavonoidであるgenistein、緑色野菜に含まれるflavonoidであるapigenin、海草に含まれる天然carotenoidであるfucoxantin、蜜蜂によって産生されるpropolisの成分であるartepillin C、アブラナ科植物に含まれるisothiocyanate類であるsulforaphane等の作用機構を研究した。 genisteinはgadd45遺伝子を誘導することで癌細胞の増殖を抑制することを明らかにした。apigeninはp21/WAF1遺伝子を誘導することで癌細胞の増殖を抑制することを明らかにした。fucoxantinやartepillin Cもp21/WAF1遺伝子を誘導することで癌細胞の増殖を抑制することを明らかにした。 これらの結果は、gadd45やp21/WAF1を標的とした分子標的癌予防法の開発の可能性を示唆するものである。sulforaphaneは単独でも細胞増殖抑制やアポトーシス誘導を起こすことが近年明らかになったが、我々はアポトーシス誘導性サイトカインであるTRAILのレセプター分子であるDR5の発現を誘導することを明らかにした。その結果、sulforaphaneによりDR5を誘導することで、低濃度のTRAIL処理により癌細胞にアポトーシスを誘導することを可能とし、これらの結果はDR5を標的としたsulforaphaneとTRAILの分子標的併用予防法の開発を示唆するものである。
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