研究概要 |
研究目的:ヒトの日常摂取Cdレベルを含む低濃度Cd摂取と妊娠出産哺乳による母体の骨代謝に及ぼす影響を、Cd摂取の中断の有無による快復の可能性を検討するものである。また、これに付随して、胎仔・新生仔へのCdの母仔間移行と骨代謝や生殖器関連の内分泌機能への影響を明らかとすることを目的として実施する。 研究実施計画:研究初年度の平成16年度は、Wistar系雌ラットに、1,2,5mg/kgの各Cd量を6日/週、定量的に経口投与し、雄ラットと交配し、妊娠出産哺乳の負荷を掛けたうえで、哺乳の有無の違いとCd投与の中断の有無によるCdの母体骨代謝に及ぼす影響を検討した。 研究成果 1.妊娠哺乳負荷と慢性カドミウム摂取により、母体大腿骨の骨密度の低下し、副甲状腺ホルモンPTHの活性化と骨吸収指標の尿中デオキシピリジノリンの排泄増加が5mgCd/kg群で認められ、比較的低濃度のカドミウム摂取が哺乳負荷による母体の骨代謝に修飾影響を及ぼすことが明らかとなった。 2.母体からの慢性カドミウム摂取によるカドミウムの母仔間移行は血液・胎盤関門により抑制されているが、微量ながら仔ラット(胎児)に移行され、その際子宮組織中の金属結合タンパク質はカドミウムを結合し蓄積することでカドミウムの仔への移行を抑制する働きをしていることが明らかなった。胎盤を経由して仔(胎児)に移行したカドミウムの形態は、出生1日目の仔の肝臓に多くのカドミウムが蓄積していることから、非メタロチオネイン結合のカドミウムと推定された。 3.母体の骨代謝は妊娠出産哺乳により著しく影響を受けるが、低濃度のカドミウム摂取が加わると顕著に骨密度の低下が引き起こされることが明らかとなった。カドミウムの生体影響の評価や許容摂取量の設定においては性差や生理負荷条件の違いを配慮する必要性が示唆された。
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