我々は職場環境や日常生活環境中において磁場(静磁場・電磁場)に曝露する機会が多い。これまでに強静磁場曝露に曝露すると小核誘発頻度が亢進することと、化学物質による染色体異常誘発頻度が静磁場曝露により亢進することを報告してきた。今年度は、小核試験を用いて活性酸素誘導化学物質(ドキソルビシン、マイトマイシンCはO_2^-を誘導する)による小核形成が静磁場同時曝露により増強されるか、また抗酸化剤のアスコルビン酸投与により小核誘発がどのように抑制されるかを検討し、以下の結果を得た。 1.ドキソルビシン及びマイトマイシンCにより小核が誘発された。 2.ドキソルビシン及びマイトマイシンCによる小核誘発頻度がアスコルビン酸投与により抑制傾向を示した。 3.ドキソルビシン及びマイトマイシンCによる小核誘発頻度が磁場により亢進した。 4.ドキソルビシン及びマイトマイシンCによる小核誘発頻度が磁場により亢進したが、アスコルビン酸の投与により抑制された。 5.磁場曝露により小核誘発が亢進した。 6.磁場曝露による小核誘発がアスコルビン酸投与により減少した。 7.静磁場による小核誘発増強作用はアスコルビン酸の投与量に応じて抑制された。 8.静磁場による小核誘発増強作用はアスコルビン酸の投与により持続的に抑制された。 以上の結果は、静磁場曝露が変異原物質由来活性酸素誘導の引き金となり小核誘発を助長することを示唆する。また、労働環境や日常生活環境中で曝露する化学物質(活性酸素誘発物質)と磁場による染色体異常誘発をアスコルビン酸摂取により低減できると考える。 今後、動物を用いて磁場のラジカルを介した変異原性誘発機構をさらに検討するとともに、神経細胞株を用いてラジカルを介した脳腫瘍誘発メカニズムを検討する。
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