我々は職場環境や日常生活環境中において磁場(静磁場・電磁場)に曝露する機会が多い。これまでに強静磁場曝露に曝露すると小核誘発頻度が亢進することと、化学物質による染色体異常誘発頻度が静磁場曝露により亢進することを報告してきた。しかし、磁場の小核誘発メカニズムに関する決定的な証拠を提示するには至っていない。そこで、種々の変異原物質の変異原性に及ぼす磁場の影響を変異原性誘発メカニズムの観点から明らかにして、発癌リスクを解明することを目的として本研究を行った。内容として、磁場の活性酸素誘発作用と染色体異常修飾作用を取り上げて研究を進めた。その結果、以下のことが明らかとなった。 1)アスコルビン酸(AS)自身に小核誘発能は認められなかった。 2)活性酸素を誘導することが知られているドキソルビシン(DOX)およびマイトマイシンC(MMC)による小核誘発は、静磁場曝露により増強された。 3)MMCによる小核誘発が静磁場曝露によりにより助長されるが、その小核誘発頻度はVCの投与量に応じて抑制された。 4)MMCによる小核誘発が静磁場曝露によりにより助長されるが、AS投与後24時間以降も抑制された。 5)AS投与後、直ちにMMCを投与し静磁場曝露したときに、小核誘発は最も強く抑制された。 6)AS投与後、直ちにMMCを投与し静磁場曝露したときには、ASによる小核誘発抑制作用は少なくとも72時間は保持される。 7)磁場曝露により骨髄細胞に8-OHdG産生が時間依存性に増加した。 以上の結果より、磁場の小核誘発するメカニズムとして活性酸素が深く関わっていることが示唆された。
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