研究概要 |
マウス個体レベルでの発癌リスク測定法の確立のためには、オペレーター遺伝子とリプレッサー遺伝子の2重トランスジエニック細胞が十分機能することの確認を要する。この目的のために、lacZレポーター遺伝子を発現するレポーターコンストラクトと、lacZリプレッサーを発現するリプレッサーコンストラクトを作成し、マウスNIH3T3細胞に導入し、二重トランスジェニック細胞を樹立した。この細胞を染色体に大きな欠損変異を導入するクロラムブチルで処理し、lacZリプレッサー遺伝子の欠損によるレポーター遺伝子の発現効率を検討中である。LacZレポーター遺伝子とLacZリプレッサー遺伝子の2重トランスジエニックマウスの作製のために、APC遺伝子および、Smad4遺伝子ゲノムDNAを用いて、レポーター遺伝子を含むAPC遺伝子ノックアウトコンストラクトおよびリプレッサー遺伝子を含むSmad4ノックアウトコンストラクトの作成を継続中である。βカテニンを介したWntシグナルの異常を検出するレポーターシステムの構築の前に、遺伝性大腸癌の原因遺伝子であるAPC遺伝子について、3種類の異なる領域に遺伝子変異が導入されたAPC遺伝子ノックアウトマウス(APC1309,APC850Min, APC580D)の消化管腫瘍数と、βカテニンの細胞質、核への蓄積を検討した。その結果、APC1309<APC580D<APC850Dと腫瘍数が多くなり、これと同じように腫瘍でのβカテニンの核、細胞質への蓄積が増強する傾向が確認された。この事から、βカテニンを介したWntシグナルの異常が消化管腫瘍の発生に強く関与する事が裏付けられた。しかし、βカテニンの細胞質、核への蓄積がほとんど認められないAPC1309マウスにおいても腫瘍の発生が認められる事から、βカテニンを介さない経路の異常も腫瘍発生に関与する事が示唆された。
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