研究概要 |
石川県金沢市のK病院で妊娠中経過観察および出産し、母乳提供に協力の得られた女性44名について,分娩後5-8日における母乳の採取,栄養調査およびアンケート調査を行った。母乳は冷凍保存後,脂肪抽出,ダイオキシン分画を精製分離し,異性体をGC/HRMSにて測定した。その結果、本研究対象者の母乳中ダイオキシン濃度はこれまでに報告されている都市部の濃度に比べ低く、異性体のパターンも相違なかった。アンケートでは喫煙や飲酒習慣、妊娠中の貧血、合併症の有無、分娩、出産後の状況など母体に関する情報と児の性別、生下時身体測定値,1ヶ月時健診時身体測定値など出生児に関する情報、栄養調査については簡易食物摂取状況調査票に魚介類の産地などについての問いを追加して調査を行ない,母乳中ダイオキシン濃度との関連性について解析を行った。母乳中HxCDDは、母親の身長、児性別、在胎週数などの交絡因子を調整しても、児の生下時体重や頭囲との間に負の関連が認められ、胎児期の成長に影響を与えている可能性が示唆された。しかし、1ヶ月健診の児身長とHpCDFは正の相関を示した。このHpCDFは、魚類の摂取が多い母親の母乳中に多い傾向にあり、特に「あじ・いわし・さば」などを好む親に高かった。これらのことから、魚類の摂取が多い母親の母乳は、HpCDFが増えたとしても、出世後の児成長には促進的に働く可能性が示唆された。一方、緑黄色野菜を多く取る母親の母乳中HxCDD濃度は比較的高く、魚だけでなく、野菜も農薬由来のダイオキシン暴露源となり、胎児発育に影響を及ぼす可能性が示唆された。
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