本年度は結晶質シリカやアスベスト(クロシドライト)、および新規物質であるシリコンカーバイドやチタン酸繊維をラットに気管内注入し、3日、7日、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の観察期間をおき解剖を行った。ラット肺における酸化ストレスに対する防御因子であるヘムオキゲナーゼー1(HO-1)遺伝子の蛋白発現において、肺に不可逆性変化をきたした結晶質シリカやアスベストにおいてはその発現は急性期より有意に亢進しており、一方可逆性の変化をきたしたシリコンカーバイドやチタン酸繊維においては全期間を通じて亢進を認めなかった。mRNA発現においては、結晶質シリカ注入モデルにおいて注入早期では亢進が認められなかったが、慢性期においては亢進を認めた。免疫組織染色法においては、肺に不可逆性変化をおこした結晶質シリカやアスベスト曝露モデルにおいては、粉じんの沈着部位や炎症部位と一致し、特にマクロファージにおいて陽性細胞を認めた。肺に非可逆性変化を認める場合においてのみHO-1遺伝子の発現変化を認めたことより、HO-1遺伝子は粉じん曝露による肺傷害の程度を判定しうるバイオマーカーになると考える。
|