我々はダイオキシン曝露による生体影響指標としてDNAの酸化損傷に注目し8-OHdGを標的として検討してきた。一方、研究を進める中で尿中8-OHdG量が常に高値である人と常に低値である人の存在が確認された。そこで我々は、酸化ストレスを生じさせる主要原因であるP450とDNA修復酵素に注目してその多型とダイオキシン曝露との関係を研究することを計画した。 平成16年度より、ダイオキシン類曝露が考えられる一般ごみ清掃工場、産業廃棄物焼却工場及び家電製品リサイクル工場の労働者集団の協力を得て健康・曝露調査を実施してきた。これら集団より採取した血液、尿を用いてダイオキシン量、酸化ストレスマーカー、P450やDNA修復酵素の発現量の測定を行い集団内に発現量のクラスターがあるかどうかを検討してきた。その結果、ダイオキシン曝露による反応性が異なる集団を同定することができた。 本年度は、今までに得られたクラスター形成要因がどのような遺伝子多型と関連しているか、特にP450とDNA修復酵素の多型に的を絞って調べた。その結果、サンプルにおける多型の分布が偏っているためにクラスター形成と標的多型との間の明確な関連は得られなかった。これ以上大幅にサンプサイズを拡大できない以上、影響評価指標として用いている遺伝子発現量及び尿中8-OHdG量の変動要因を更に検討する必要がある。そこで、尿中8-OHdG量の酸化ストレスレベルの変動要因をさらに追求した。体内での尿の蓄積時間の効果を検討したところ25℃において24時間保持すると非喫煙者では変化は認められないが、喫煙者では減少した。38℃になると4時間以上保持すると80H-DG量が減少することが分かった。尿採取の条件を決めることが大事であり、特に体内蓄積時間を短くすることが重要であることが分かった。
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