研究課題
基盤研究(C)
私は協力研究者と共に、1)ダイオキシン類曝露による遺伝子発現の個人差、2)酸化ストレス状態評価法の確立、3)生体影響に対するダイオキシン類と多環芳香族との間の干渉効果、の3テーマに沿って研究を進めた。1)複数の清掃工場と産業廃棄物焼却工場の労働者の調査により、各曝露ダイオキシン類当たりの遺伝子発現誘導能指標を用いることにより対象集団を2群(誘導発現量の高い群、低い群、それぞれI, II群とした)に分割できることが分かった。CYP1B1とCYP1A1の遺伝子発現の誘導に関しては、I群はダイオキシン類への感受性が高く、II群はダイオキシン類への感受性が低い群と考えられた。実際にどの遺伝子の多型がこの2群形成に関与しているかはこれからの問題であるが、表現型という実際に出現している影響から遺伝子多型を評価できる方法を手に入れることができたことは非常に価値が高い成果であると考える。2)酸化的DNA損傷物質である8-hydroxy-2' -deoxyguanosine(8-OH-dG)の尿中排泄量を用い、ダイオキシン類曝露による酸化ストレス反応の個人差を評価したい。そのため、一番安定した値が得られる尿サンプル、その保存法、そしてその方法を用いた一般生活状態における主要変動要因の検討を行った。その結果、早朝2番尿を用いた尿量補正値ないし尿流量当たりの排泄量を用いると早朝1番尿を用いた尿量補正値と比較して安定な指標となること、そして尿流量当たりの排泄量の方がより安定であることが分かった。また24時間までなら室温保存でも影響がないことが分かった。さらに、この指標は今まで報告されている喫煙、食事、運動の他に睡眠時間にも影響されることが分かった。但し、睡眠時間の場合は線形反応ではなく非線形U字型であった。3)炭素成分の燃焼ではダイオキシン類ばかりではなくやはり発がん性がある多環芳香族類が生成することがよく知られている。そこで我々はダイオキシン類と多環芳香族類両方に曝露されている可能性のある清掃工場と産業廃棄物焼却工場の労働者の酸化ストレスレベルへの影響を検討することにした。血液中ダイオキシン類、尿中1-hydroxypyreneと2-naphthol、尿中8-OH-dを測定した。重回帰分析により各工場の効果、喫煙の効果を分離した結果、ダイオキシン類曝露レベルは酸化ストレスレベルに影響していなかったが、多環芳香族類曝露に関しては、pyreneではなくnaphthaleneに曝露されている集団で酸化ストレスレベルが上昇していた。
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