1.地域の社会経済的不利により低下する地域住民の健康水準の定量化 地域住民の健康水準と地域の社会経済的指標との関連の定量化として、都道府県および市区町村を単位とした分析を行った。社会経済的水準の低い地域は高い地域に比較して高い死亡率を示した。死亡率と社会経済的指標の関連について、過去25年間の経年変化を分析し、その関連性が時代とともに変化することを明らかにした。介護保険認定率を用いて算出した健康寿命は、一人当たり収入、失業率、高齢者一人暮らし世帯割合、離婚率等と有意な関連が認められた。 2.地域住民の健康水準と関連する社会経済的指標の開発 既存の社会経済的データを用いて、収入、学歴、居住環境等の社会経済指標を組み合わせ、地域の不利な社会経済的要因を表す困窮インデックスを算出した。都道府県および市区町村を単位として、困窮インデックスと死亡率との有意な関連を明らかにした。大腸・肺・乳がんについては、市区町村別のSMRを算出し、疾病地図の描写と集積地域の同定を行った。 3.個人と地域の社会経済的要因が健康状態および生活習慣に与える複合的影響 全国規模サンプリング調査を用いて、生活習慣と個人・地域特性との関連を明らかにした。喫煙について、世帯収入が喫煙と強く関連し、その関連性は性・年齢階級で異なることが明らかになった。がん検診受診については、低い世帯収入はがん検診の未受診に関連するとともに、都市域住民の低い受診率が明らかになった。さらに、6つの健康リスク行動を対象に、マルチレベル分析を用いて分析した結果、これらの健康リスク行動が世帯収入等の個人の社会経済的要因に関係し、都市域において不健康リスク行動がとられやすいことを示した。 以上、個人と地域の社会経済的状態が健康を低下させる様相を定量化し、その機序として、喫煙やがん検診などの生活習慣や予防サービスの利用の重要性を明らかにした。
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