研究概要 |
背景および研究目的:新型インフルエンザの発現が危惧される現在、インフルエンザの地域伝搬様式に基づく有効な流行阻止対策策定が急務であるが、地域社会においていかにインフルエンザが拡大するかについてまだ十分解明されていない。この要因として、現状のサーベイランス情報は定点医療機関に限定される、受診医療機関が患者の居住地域とは限らない、地域内外の人の移動が多いなどがあげられる。本研究は、地域内外の人の出入りが比較的少なく、医療が地域内で完結する離島をフィールドとし、GISを用いてインフルエンザの地域内の流行伝搬解析を行い、有効な対策策定に向けた基礎情報を得ることである。 方法:(1)島内の全幼児・学童約5,000名を対象とし2005/2006シーズンのワクチン接種と罹患に関する調査を実施しワクチン効果を解析した。(2)島内の医療機関との連携によりインフルエンザ地域発生情報公開システムを構築し、得られた患者情報を用いてGISによる発生地図作成と疫学解析を行った。 結果および考察:2005/2006シーズンの幼児・学童の罹患率は5%であり、先シーズンの36%より著しく低下した。罹患者におけるウイルスタイプは、A型が65%であった。ワクチン接種率は54%であり、ワクチン接種による罹患の相対危険度は園児0.88(ns.)、学童0.65(p<0.01)であった。患者情報解析から地域へのインフルエンザの持ち込みは成人であるが、その後の発生数は小学生が最も多く、GIS解析では地域の流行と小学校の流行が類似しており、小学校区別に算出した小学生の発生数と小学生以外の発生数の相関はr=0.500(p<0.01)と高かった。以上より、小学校の流行状況は地域の流行状況の把握に有用であり、また地域の流行抑制には小学生へ予防対策が重要であると考えられた。なおインフルエンザ発生地図は毎週インターネットにて公開している。
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