研究概要 |
滋賀県の某地区で約3,000人から文書による同意を得て、ALDH2、CETP Taq1b、AGT-M235T、α-Adducin ADD1等の遺伝子解析が進行中である。本研究では、遺伝子解析結果を過去数年間の検査所見と照合し、遺伝多型と循環器疾患危険因子との関連を縦断的に解析可能なデータベースを構築した。また対象者の飲酒、喫煙、塩分摂取量を調査し、身体活動量の指標として安静時心拍数を計測した。Taq1b、ALDH2遺伝子多型とHDL-Cの関連を循環器疾患既往歴のない1,868名で検討すると、Taq1b B1/B1、B1/B2、B2/B2の年齢調整HDLコレステロール値は、男性で52、53、55、女性で59、61、65mg/dlであり、B1 alleleで低かった。またALDH 1/1、1/2、2/2では、男性で54、52、50、女性で61、60、61mg/dlであり、男性の2 alleleで低かった。年齢、喫煙、BMI、心拍数、Taq1*B1およびALDH2*2alleleの有無を独立変数とした重回帰分析の結果、Taq1*B1、ALDH2*2のHDL-Cに対する偏回帰係数は、男性で-2.4(P=.08)、-3.6(<.01)、女性で-4.6(<.01)、-1.6(.04)であった。しかし独立変数に飲酒量を加えると、ALDH2*2とHDL-Cの関連は消失し、女性のTaq1*B1のみ有意差を示した(-4.4,P<.01)。3年前の検査所見が得られた1,090人を対象としてHDL-Cの変化量と各指標の関連をみたが、遺伝子多型との関連はなく、BMIの増加がHDL-Cの低下要因であった。血圧に関しては、AGT M235TT/T、ADD1 G460T T/Tの両方の遺伝子型を持つ者では、飲酒や肥満などを調整しても高血圧の有病率が高いことを見出したが、問診で把握した塩分摂取量は、血圧やこれらの遺伝子多型と交互作用を認めなかった。
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