研究概要 |
滋賀県某地区で約3,000人から同意を得て循環器疾患と関連する複数の遺伝子多型を解析した。本研究はこれらの対象者の生活習慣を調査し、遺伝子との交互作用の解析を通じて、遺伝子多型別の生活習慣改善手法の開発に資することを目的とした。その結果、以下の知見を得た。 1.食塩感受性高血圧の原因遣伝子と考えられているアンギノテンシノーゲン(AGT)、アデューシン(ADD)の遺伝子多型と塩分摂取量が、地域一般住民の血圧値に与える影響を降圧剤による治療を受けていない1,647人の地域住民を対象として実施した。AGT M235T T/T、ADD1 G460T T/Tの遺伝子多型を同時に有数する群では、飲酒や肥満などを調整しても高血圧の有病率が高かったが、塩分摂取量と遺伝子多型に交互作用を認めなかった。 2.地域住民2,395名を対象として、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)遺伝子多型と血圧の関連について解析を行った。収縮期血圧、拡張期血圧はALDH2 ^*1/^*1、^*1/^*2、^*2/^*2の順に低くなっていく傾向を示したが、共分散分析で飲酒量を調整するとこの有意差は消失した。HDLコレステロール値とALDH2遺伝子多型の関連も同様の傾向を示した。 3.血清脂質に影響を与える薬剤の投与を受けていない1,729人の地域一般住民を対象としてCETP Taq1B遺伝子多型、生活習慣、HDLコレステロールの関連を検討した。CETP Taq1B B2B2遺伝子型を持つ者は飲酒によってHDLコレステロールが上昇しやすいと推測されたが、喫煙、BMI、ウエスト周囲径、ウエスト・ヒップ比とCETP遺伝子多型の間には交互作用を認めなかった。 今回調査した範囲では遺伝子多型別の生活習慣改善技法として特異的なものは見出せなかった。減塩、節酒、禁煙、減量等一般的な生活習慣の改善はどの遺伝子型であっても必要と考えられた。
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