研究概要 |
本研究は、縦断的データ分析の方法を用いることにより、原爆被爆者検診データの経時的な推移を調べるものである。本年度はまず、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科附属原爆後障害医療研究施設のコンピュータに、データベース化して保存されている被爆者検診のデータについて、個人に固有の識別番号をもとに個人の検査データを縦断的にリンクする作業を行った。次に、閉経後女性における骨密度の縦断的な変化を明らかにするために、骨密度検査のデータを分析した。対象は1994年5月から1995年4月までに検査を受けた50〜69歳の女性195人であり、平均年齢は60歳であった。骨密度はDXA法により腰椎(L2-L4)正面を測定した。対象者は2004年4月までの期間に平均3.1回の検査を受けており、ベースラインの検査から最後の検査までの間隔は平均5.4年であった。ベースラインの検査において、骨密度と年齢(r=-0.29,p<0.001)及び閉経からの年数(r=-0.25,p<0.001)との間に有意な負の相関がみられ、body mass index (r=0.22,p=0.002)との間には正の相関がみられた。また生活習慣については、1日の歩行時間が1時間以上の人は、1時間未満の人よりも骨密度が有意に高かった(p=0.04)。骨密度の経時的な変化については、ベースラインの検査から最後の検査までの間に、対象者の骨密度は0.796から0.784へと減少していた。年齢階級別ではベースライン検査での年齢が50〜54歳の人(0.862→0.814,p<0.001)及び55〜59歳の人(0.807→0.791,p=0.04)において、骨密度が有意に減少していたのに対し、60歳以上の人では有意な減少はみられなかった。さらに縦断的なデータ解析により、年齢の2乗に比例して骨密度は減少することが明らかとなった。
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