研究概要 |
本研究は、縦断的データ分析の方法を用いることにより、原爆被爆者検診データの経時的な推移を調べるものである。以下の2つの研究を行った。 1.閉経後女性における骨密度の縦断的変化 対象は1994年5月から1995年4月までに骨密度検査を受けた50〜69歳の女性195人である。骨密度はDXA法により腰椎正面を測定した。対象者は2004年4月までの期間に平均3.1回の検査を受けた。ベースラインの検査において、骨密度と年齢(r=-0.29)及び閉経からの年数(r=-0.25)との間に有意な負の相関がみられた。骨密度の経時的な変化については、ベースラインの検査から最後の検査までの間に、対象者の骨密度は0.796から0.784へと減少していた。年齢階級別ではベースライン検査での年齢が50〜54歳の人(0.862→0.814,p<0.001)及び55〜59歳の人(0.807→0.791.p=0.04)において骨密度が有意に減少していた。 2.死亡前検査値の変動 対象は1980年から2002年の間に原爆被爆者健診を受診した人のうち、リンパ組織及び造血組織の悪性新生物により死亡した502人である。死因の内訳は急性白血病94人、慢性白血病86人、その他の白血病50人、リンパ組織系疾患63人、骨髄腫70人、その他139人であった。疾患別に白血球数、尿酸値、lactate dehydrase、C-reactive proteinの経時変化を調べた。その結果、疾患の種類により白血球数をはじめとする検査値の変化に特徴的なパターンがみられた。急性白血病は死亡日が近づくにつれて白血球数が低下傾向にあり、慢性白血病においては死亡日が近づくにつれて白血球数が増加する傾向にあった。リンパ組織系疾患及び骨髄腫においては追跡期間を通して白血球数の変動は2,000から10、000(/μL)の範囲に収まった。
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