研究課題
前年度において、著者らは、日本におけるロタウイルス胃腸炎の罹患者数および罹患率を推定した。その結果、わが国においては年間80万人の小児が小児科医院または病院外来を受診し、また小学校に上がるまでに2人に1人の子供が小児科を受診すると推定され、ロタウイルス胃腸炎の疾病負担は非常に大きいと考えられた。現在、ロタウイルスによる重症下痢症の予防を目的として、欧米を中心に第二世代のロタウイルスワクチンの開発が進められている。しかし、1998年の米国における第一世代のロタウイルスワクチン(RRV-TV)導入の際、腸重責症の過剰発生が副反応として疑われたため、第二世代のロタウイルスワクチンの導入の際には、ワクチン導入前の小児における腸重責症の罹患率を明らかにしておく必要がある。そのような推定値を得るために、著者らは、日本の北部のある地域において小児科ベッドのほとんどを供給する病院において、臨床記録をレビューした。1978〜2002年の25年間において、放射線医学的に確定された91人の5歳未満小児の腸重責症による入院があり、その45%は1歳未満であった。もし、その地域におけるすべての腸重責症の小児がその病院を受診したと仮定すると、1歳未満の小児では10万人・年当たり平均約185人の入院があり、5歳未満では10万人・年当たり平均78人の入院があると推定された。なお、期間による変動があったが、一定の長期的傾向は認められなかった。日本における腸重責症の罹患率は、これまで報告されたものの中で最も高いところにあり、地理的な差が存在することのさらなる証拠を提出するものであった。
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