研究課題
基盤研究(C)
現在、諸外国においてロタウイルスワクチンの臨床試験が進行中であり、わが国におけるワクチン導入の是非を考える場合、ロタウイルス下痢症の疾病負担を明らかにしておく必要がある。そこで、著者らは全国規模でのロタウイルス胃腸炎の罹患者数および罹患率を推定した。全ての原因による感染性尾胃腸炎の推定値は、1999年の感染症法の施行により得られるようになった。この値および急性感染性胃腸炎の外来患者におけるロタウイルス検出割合から、ロタウイルス胃腸炎の年間罹患率、年齢階級別の年間罹患率、および6歳までの累積罹患率を推定した。外来患者におけるロタウイルスの検出割合は、4つの研究のメタアナリシスによって得た。割合の要約推定値は、分散の逆数で重み付けした平均として求めた。わが国において年間80万人の6歳未満の小児がロタウイルス胃腸炎により小児科医院または病院外来を受診し(罹患率=11人/100人・年)、6歳までに2人に1人の子供が小児科を受診すると推定された。以上の結果から、日本においてはロタウイルス胃腸炎の疾病負担はかなり大きいものと考えられた。1998年の米国における第一世代のロタウイルスワクチン導入の際、腸重責症の過剰発生が副反応として疑われたため、第二世代のワクチンの導入の際には、導入前の腸重責症の罹患率を明らかにしておく必要がある。そこで、著者らは、ある地域において小児科ベッドのほとんどを供給する病院において、臨床記録をレビューした。1978〜2002年の25年間において、放射線医学的に確定された91人の5歳未満小児の腸重責症による入院があり、その45%は1歳未満であった。もし、その地域におけるすべての腸重責症の小児がその病院を受診したと仮定すると、1歳未満の小児では10万人・年当たり平均約185人の入院があり、5歳未満では10万人・年当たり平均78人の入院があると推定された。
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