わが国において、population-basedな双生児レジストリーを構築するための戦略を検討した。諸外国における現状を詳細・系統的に検討し、双生児同定の方法として以下を認めた。(1)公的登録(国民登録、個人番号、出生登録、死亡登録、医療保険登録等)、(2)個人情報(運転免許登録、顧客リスト、クレジットカード登録等)、(3)がん登録など疾患登録のデータベース、(4)メディア(新聞広告、TV、雑誌等)、口コミ、Web site情報の利用、(5)コミュニティレベルでのキーパーソンからの情報、(6)一定地域の学校に対する問い合わせ、(7)医療施設からの情報、(8)多胎家庭支援組織の協力。レジストリー構築目的の大半は人類遺伝学の研究であり、一部で産科・母子保健の調査研究が認められた。人類遺伝学の研究は、(1)大規模登録に基づく遺伝疫学研究、(2)発端者双生児の同定によるまれな疾患、詳細な臨床症状に重点を置く臨床遺伝学研究に大別された。母子保健に関しては、(1)地域医療施設をベースとする悉皆的な把握による多胎児出産の基本動向、先天異常発症率の把握、母子のリスク管理、児の縦断的フォロー、(2)症例数が少ない疾患の国際協力研究に大別された。以上の中で、一定の手順を踏んだ上でわが国でも実現の可能性があるのは、(1)住民基本台帳の閲覧・転記からの推定、(2)人口動態出生票の利用、(3)妊娠届け(母子健康手帳配布)時の紹介、(4)メディアの活用、(5)医療施設情報、(6)多胎家庭支援組織の協力などである。しかし、諸外国と異なり遺伝疫学研究を前面に押し出した「研究のための双生児レジストリーの構築」は困難であると予想された。双生児「による」研究、双生児「の」研究、双生児「のための」研究を融合した、研究者・当事者の双方向参加型のレジストリー構築が肝要であると結論された。
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