本年は3年計画の初年度であり、エンパワーメント(Empowerment)に関する先行研究について、情報収集、レビューを行い、我が国の市町村における地域保健活動を念頭においた場合の、エンパワーメントの構成概念規定を行った。エンパワーメントに関する先行研究は、教育、精神保健、女性社会学などの分野で多数行われてきた。Rappaport(1981)は、エンパワーメントを、個人の能力、自然形成的な支援システム、率先した行動を、社会政策や社会変革に結びつける構成概念であると定義している。Eng(1994)は、コミュニティ・エンパワーメントについて、コンピテンス(competence)という言葉もほぼ同義に使いつつ、その要素として、参加、関与、自己認識、発言、対立の解決、社会との関係構築、意思聴取手法、社会的支援を挙げている。Miller(1994)は、地域公衆衛生活動の活発度(performance)を評価するために、調査、政策形成、保障に分けてチェック項目を提唱している。医学中央雑誌による検索では、精神・心理、糖尿病患者、また看護職のエンパワーメンントに関する文献が多数見られた。本研究テーマに直結する文献は多くはないものの散見された。門間(2000)は、保健婦のエンパワーメントの下位尺度として、家族への励まし、主体性、コミュニティへの影響に分類し、また生活満足度、働きがい度、自己充実的達成動機との関連を検証している。田村(2000)は、エンパワーメントに関して測定すべき項目として、問題解決能力、自己効力感、自尊心を挙げている。次年度は、全国の市町村を対象に、エンパワーメントの程度および関連要因に関する調査、分析を行う。
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