研究課題
本年度は、市町村における地域保健活動のエンパワーメントについて、記述疫学的に現状を把握すること、また、エンパワーメントについての構成概念妥当性の検証を行うことを目的とした。全国の市町村の記述疫学像として次のことが明らかとなった。職員のアイディアの活用を十分に行っている市町村は13.0%、住民のアイディアの活用を十分に行っている市町村は8.8%、住民が気軽に行政に意見できる機会づくりを十分に行っている市町村は15.2%。一方、保健センター職員または保健師が予算編成によく関わっている市町村は70.4%、市町村内で保健業務に関する研修会やOJTをよく行っている市町村は9.6%、地域の組織の活性化のための活動をよく行っている市町村は22.0%、市町村と地域の保健に関する組織との間で相互に本音の情報交換や提案のやりとりなどをよく行っている市町村は15.7%であった。主観的、総括的エンパワーメント度は、高い市町村が62%、やや高い市町村も含めると28.5%であった。現状の人員や予算のもとでの最大を100%とした時に、主観的な保健事業の達成度が90%以上である市町村は30.6%、住民に必要な質・量が満たされた状態を100%とした時の達成度が90%以上である市町村は2.4%であった。一部、構成概念妥当性の検討を行った結果、主観的エンパワーメント度が高い市町村ほど、地域保健・老人保健事業報告により把握される高血圧割合(中等度以上)、また喫煙率が低いなどの結果であった。次年度は、今回把握した以外の種々のデータとも結合した解析を行い、全国の市町村についてエンパワーメント測定結果と種々の保健指標との関連、市町村のエンパワーメントに寄与する要因を解析し、成果報告を行う予定である。
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