研究概要 |
大阪府の全公立小学校児童を対象とした自覚症状調査が、1973〜2003年まで2〜3年毎に15回実施されてきた。児童の「咳」有訴者率は、1983年以降約10%でほぼ横ばいに推移し、「家の近くは昼も夜も自動車がたくさん通る」(以下「自動車交通量が多い」)該当者率、および大阪府の大気中二酸化窒素(NO_2)濃度もほぼ横ばいの状況であった。市区町村別「咳」有訴者率と「自動車交通量が多い」該当者率は、どの調査年度においても有意な相関関係がみられた(2003年度:r=0.673,p<0.001)。しかし1993年と2003年に「咳」有訴者率がやや上昇する変動が見られ、1983〜2003年までの10回の調査で、「咳」有訴者率と7〜8月の平均気温とが有意な逆相関を示した(r=-0.710,p<0.05)。調査は毎回10月中旬に実施され、夏期の気候が「咳」有訴者率に影響すると考えられた。気象条件が異なる年度の有訴者率を比較する際には、バイアスとなる。そこで気象条件が同様な1993年と2003年について、全67市区町村を「自動車交通量が多い」該当者率のレベルで8区分にまとめ、「咳」有訴者率との関連をみると、「自動車交通量が多い」該当者率が最も低い第8地区(20%未満)と第7地区(20〜25%)の「咳」有訴者率がほぼ等しく、「自動車交通量が多い」該当者率が20〜25%あたりになると、「咳」有訴者率にほとんど影響しなくなると考えられた。一般環境測定局周辺校の「自動車交通量が多い」該当者率とその局のNO_2年平均値とは強く相関する(r=0.750,p<0.001)ので、この回帰式から「自動車交通量が多い」該当者率20〜25%をNO_2濃度に換算すると、小児の「咳」症状に影響を及ぼすNO_2濃度の下限値は、年平均値にして0.022〜0.024ppmと試算された。
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