研究概要 |
我々は40歳以上の男女約2,000名を対象に、平成11年度より大規模な住民検診を行ってきた。その際に血液を摂氏-70度以下に凍結保存し、今回の研究のために準備してきた。我々はすでに約1,500検体のエンドセリン1(ET-1)の測定値を得ており、まず血圧値との関連があるか否かを検討した(Hirai Y, et al. 74th American Heart Association 2001)。即ち、ET-1は血圧それ自体と関連はないが、血圧の重症度と関連することを示した。 今回の研究では、さらに検体測定数を増やし、腎機能障害、心肥大などの臓器障害とはどのような関連性を有するかを検討している。即ち、ET-1が持つ臓器障害の影響を詳細に検討している。次に我々が興味を持っている点は、強力な血管収縮作用を持つET-1に対する拮抗薬の臨床的研究の糸ロになり得るような基礎資料が提供できるかということである。近年の臨床疫学はEvidenced-based medicineの時代に入っており、臨床に直結した研究が盛んに行われるようになった。本研究を通じて我々は新しい心不全および高血圧治療に繋がるような意義深いものになるよう努力している。即ち、循環するET-1が脳・心血管系の新しい危険因子であるかどうかは、詳細な予後調査を行う縦断研究の結果を待たねばならない。我々は前述のようにすでに多数のET-1を測定しており、さらに検体数を増やすとともに再検診を行い、その際には発症調査も行いたいと考えている。このように、横断および縦断研究を行うことで包括的にET-1の実態を明らかにし、疫学のみならず、創薬を含めて臨床の場に貢献できる研究を目指している。
|