研究課題/領域番号 |
16590530
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研究機関 | (財)東京都医学研究機構 |
研究代表者 |
飛鳥井 望 財団法人東京都医学研究機構, ストレス障害研究部門, 参事研究員 (30250210)
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研究分担者 |
石井 朝子 財団法人東京都医学研究機構, ストレス障害研究部門, 研究員 (90342914)
岸本 淳司 東京大学, 医学系研究科・クリニカルバイオインフォマティクス研究ユニット, 科学技術振興特任教官
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キーワード | ドメスティックバイオレンス / 児童 / 子ども / 心的外傷 / 心的外傷後ストレス障害 / 目撃 / PFスタディ / シェルター |
研究概要 |
DV被害児童の精神健康に関する研究はきわめて少ない。本研究の目的は、DV被害児童における直接的、間接的暴力被害の実態とその精神健康への影響をあきらかにすることである。 <方法>対象は公的機関によりDV被害者と認定されたシェルター入所女性29名とその子ども(4-12歳)45名(男児25名、女児20名)である。検査:母親による自記式質問紙及び子どもに対する投影法心理検査を実施した。調査尺度は、児童用DV被害チェックリスト、児童用DV外傷性ストレス症状チェックリスト、子供の行動チェックリスト(CBCL)、PFスタディ児童用を使用した。 <結果>被害チェックリストの結果、100%の子どもが身体的暴力、心理的暴力、性的暴力のいずれかの暴力を目撃していた。また被虐待の経験のある子どもは、男児72%、女児55%、全体では67%であった。外傷性ストレス症状チェックリストの結果では、悪夢66%、母親から離れない61%、赤ちゃんがえり57%、怒り・いらいら55%、睡眠障害、暗いところを怖がる48%などがよく観察される症状であった。CBCLでは不安・抑うつ尺度、及び強迫観念・強迫行為など思考の問題尺度において男児、女児ともに一般児童の標準値を上回っていた。PFスタディの結果では、攻撃性の方向において他責傾向で標準値を下回るものが多く、自責傾向や無責傾向が標準値を上回るものが多かった。 <考察>DV被害児童は、直接的・間接的に暴力にさらされてきた体験を持ち、何らかの外傷性ストレス症状を呈し、かつ不安・抑うつ傾向と強迫などの思考の問題を有していた。ストレス対処としては、葛藤状況において自己を主張せず対決を回避するための妥協をするなどの行動をとりやすい傾向を認めた。以上の結果よりDV被害児童のケアにおいては、外傷性ストレス反応の緩和とともに、不安抑うつ、否定的な自己認知への働きかけが重要であることが示唆された。
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