本研究は、悪性新生物と脳血管疾患は不健康な食習慣、喫煙、過度のアルコール摂取などが両者のリスクファクターとして共通しており、胃がん、肺がんが先行する第一疾患の場合に、脳血管疾患が続発するリスクは有意に低く、脳血管疾患が先行する場合悪性新生物続発は有意に高いとする先行研究を背景に計画されたものである。 Tuomilehtoら(1984)はFinlandにおいて胃がんと脳卒中のリスクがともに高くなると報告し、背景として食塩摂取が共通のリスクであるとする一方、Wheltonら(1982)は食塩のリスクに見解を否定している。近年に至るまで、胃がんと脳卒中についての重複リスクについていくつかの報告が散見されるが一致した報告には至っていない。 放射線影響研究所のコホートは、死亡およびがん罹患が約50年近くも前向きに正確に追跡されており、死亡リスクを科学的に裏付けることが可能となっている。また、生活習慣要因が調査されており、本研究の資源に適切なものである。 原爆被爆者における長期の死亡観察にもとづくがんリスクについては、最近の報告では寿命調査報告第13報において詳細に示している。これに対して、成人健康集団における非がん性疾患についての最近の報告は、特に循環器疾患に対する放射線影響リスクが認められることが示唆されている。 本研究はこれらの成果にもとついて検討されたものである。
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