虚血は一般に、細胞内にカルシウムを流入させ、カルシウム依存性プロテアーゼであるカルパインを活性化し、その結果、細胞骨格のフォドリンが分解され、ネクローシスを中心とした心筋細胞死を惹起するといわれている。私たちは、一酸化炭素(CO)が虚血細胞死を抑制することを、既に報告している。本科学研究費補助金による研究では、さらに、COによる虚血細胞死抑制の機構について研究している。 (1)ラット胎児心筋由来のH9c2細胞について、虚血時、細胞内へのカルシウム上昇が認められ、ネクローシスが生起されたが、COは濃度依存的に、細胞内カルシウム上昇および細胞死を抑制した。(2)培養液中からのカルシウム除去、および、L-type Ca^<2+>チャンネル拮抗薬により、細胞内カルシウム上昇が抑制された。(3)L-type Ca^<2+>チャンネル刺激薬により、細胞内Ca2+濃度が上昇した。(4)パッチクランプを用いたカルシウムチャンネル電流測定から、COはL-type Ca^<2+>チャンネル電流を抑制することが明らかとなった。(5)虚血により、DCF蛍光等で測定される細胞内の活性酸素種は増加したが。COは活性酸素種生成に影響を与えなかった。 以上のことから、心筋細胞における虚血細胞死は、細胞外からのCa2+流入が引き金となるが、COは虚血時、特にL-type Ca^<2+>チャンネルを介する細胞外からのカルシウム流入を抑制することにより、結果的に虚血細胞死を抑制することが明らかとなった。
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