研究概要 |
ミトコンドリアDNAのタンパクにコードしない約1000塩基程度の領域(Dループ:non-cordingregion)は高頻度多型を有していることから個人識別、特に母系同一家系の調査、研究に利用されてきた。しかしながら最近の研究から突然変異を有するミトコンドリアが混在し、その結果(1)2つの塩基のピークがかさなって検出される-塩基ヘテロプラスミー(2)塩基の挿入や欠失によって生ずる鎖長ヘテロプラスミーが報告されるようになった。この変異は世代間(母子)と個体内(血液、毛髪、臓器など)に発現するが日本人集団ではその頻度や判定法についてはほとんど明らかにされていない。今年度、得られた結果は下記のとうりである。 (1)11組の母子間でHV1領域にヘテロプラスミーを有していたのは7組であった。そのうち1組は母子のヘテロプラスミーの位置と割合が完全に一致し、他の6組ではヘテロプラスミーの有無や塩基の割合に母子間での相違が明らかとなった。 (2)母子3組ではHV1の16189のCとTのヘテロプラスミーの割合の相違、母子1組では169129のGとAのヘテロプラスミーが検出された。 (3)同一人物の試料では血液よりも毛幹部のヘテロプラスミーが多く検出された。 (4)同一試料ではHV1の16116,16124、16129、16162、等多くの部位でヘテロプラスーがあり、毛髪のみでは16116,16162,16189,16223などに検出された。 (5)毛髪からのDNA抽出にはシリカビーズ法が適法であり、劣化した毛髪試料でもその有効性が確認された。
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