1.ウサギを用いた実験により、内因性γ-ヒドロキシ酪酸(GHB)の血中濃度におよぼす中枢神経作用薬の影響を検討するため、まず陰性対照として5日間に渡り生理食塩液を投与し、私達が以前に考案した気化平衡ガスクロマトグラフ(GC)法により血中GHB濃度を測定したところ、いずれの試料においても最小検出限界(0.5μg/ml)未満であり、GHBの検出感度向上に向け同分析法を改良する必要性がでてきた。そこで、GHBの物理化学的性質を巧みに利用した体液からのGRB抽出法を検討し、従来法に比しGHBの検出感度が約3倍高い直接注入GC法を確立することができた。現在、アルコール、ニコチン等の影響について直接注入GC法により検討中である。 2.直接GC注入法により、同意の得られた喫煙者、飲酒者および喫煙・飲酒習慣のない者の尿中内因性GHB濃度を1日3回、5日間に渡り測定したところ、内因性GHB濃度は、喫煙者、喫煙・飲酒習慣のない者、飲酒者の順にやや低くなる傾向が認められた。現在、ボランティアを募り、データを蓄積している。 3.死後変化の軽微な法医解剖25例について、諸種体液の内因性GHB濃度を気化平衡GC法により測定したところ、大腿静脈血(4.6±3.4μg/ml)において、脳脊髄液(1.8±1.5μg/ml)、眼球硝子体液(0.9±1.7μg/ml)、胆汁(1.0±1.1μg/lnl)および尿(0.6±1.2μg/ml)より有意に高い値が得られた。血液採取部位によるGHB濃度の相違は認められなかった。死体における内因性G且Bと外因性GHBを鑑別するためのカットオフ値は、血液で30μg/ml、尿で10μg/mlとするのが妥当と思われた。尿について設定した判断基準は、脳脊階液、眼球硝子体液および胆汁にも適用可能と思われた。
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