1.死後変化の軽微な法医解剖25例について、諸種体液の内因性γ-ヒドロキシ酪酸(GHB)濃度を気化平衡ガスクロマトグラフ(GC)法により測定したところ、大腿静脈血(4.6±3.4μg/ml)において、脳脊髄液(1.8±1.5μg/ml)、眼球硝子体液(0.9±1.7μg/ml)、胆汁(1.0±1.1μg/ml)および尿(0.6±1.2μg/ml)より有意に高い値が得られた。血液採取部位によるGHB濃度の相違は認められなかった。死体における内因性GHBと外因性GHBを鑑別するためのカットオフ値は、血液で30μg/ml、尿で10μg/mlとするのが妥当と思われた。 2.GHBの物理化学的性質を巧みに利用した体液からのGHB抽出法を検討し、従来の気化平衡GC法に比しGHBの検出感度が約3倍高い液-液抽出GC法を確立することができた。 3.液-液抽出GC法により、健常成人被験者20名(男性15名、女性5名)から提供された尿の内因性GHB濃度を測定したところ、男性被験者において、習慣喫煙者(0.52±0.37μg/ml、n=4)が飲酒・喫煙習慣のない者(0.28±0.21μg/ml、n=7)や習慣飲酒者(0.23±0.04μg/ml、n=4)よりも高値を示す傾向が認められた。飲酒・喫煙習慣のない男性被験者と女性被検者間で尿中内因性GHB濃度に差異は認められなかった。 4.ウサギの背部皮下に、エタノール2g/kg、ニコチン3mg/kg、塩酸メタンフェタミン5mg/kg、塩酸コカイン5mg/kg、塩酸モルフィン5mg/kg、又はアモバルビタールナトリウム5mg/kgを1日に1回ずつ5日間連続投与しても血中内因性GHB濃度に変化は認められず、それら濫用薬物の短期投与が内因性GHBの産生に影響する可能性は低いと思われた。
|