研究概要 |
1.p53遺伝子解析による動物種の鑑別: 動物種属間でp53遺伝子のアミノ酸が共通して保存されている領域(IVとV)にプライマーを設定しPCR法で増幅後、PCR増幅産物に含まれる第7イントロンの大きさと塩基配列を明らかにした.使用したサル類(15種類)および哺乳動物(9種類)のサンプル全てでPCRによる増幅産物が認められた.類人猿では.オランウータンを除き増幅産物の大きさの違いからヒトとサル類とを鑑別するのは困難であった.しかし,ヒトとサル類の第7イントロンの塩基配列を比較したところ,チンパンジー,ピグミーチンパンジーにおいて2ヵ所,ゴリラにおいて3ヵ所に塩基置換が認められた.上記以外のサル類においてもヒトとの塩基の違いが6ヵ所以上ありヒトとサル類との鑑別は可能であった.霊長類以外の哺乳類では動物種間おいて増幅産物の大きさおよび塩基配列が異なることから動物種の特定が可能であった.哺乳動物以外の動物では,ニワトリ,アフリカツメガエル,サケ,マス,マグロにおいて増幅産物が認められ,塩基配列を調べることによって動物種の特定が可能であった. 2.p53遺伝子のDNA多型と民族特異性: 日本人集団のp53遺伝子コドン72多型は,CCC/CCC,CCC/CGC,CGC/CGCの3型が検出され,各々の頻度は16.3,40.2,43.5%であり,またアリルの頻度はCCC:0.364,CGC:0.636であった.このアリル頻度はヨーロッパ人の頻度と類似していた.イントロン7の多型は72番目(C/T)と92番目(T/G)の塩基に認められ,この2つは完全連鎖不平衡でハプロタイプはC-T;T-Gであった.その頻度はC-Tホモが57.1%,T-Gホモが7.6%,C-T/T-Gヘテロが35.3%であり,アリル頻度はC-T:0.745,T-G:0.245であった.この頻度はヨーロッパ人集団とは明らかに異なっており,民族特異性があることが明らかになった.
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