研究概要 |
死体温・環境温連続モニタリングシステムを構築し、解剖事例に導入してその有効性を検討した。ボタン型温度データロガ(SEC-CD16TB,三洋電機)はその内部に2048個の温度データを記録することができる。測定条件は5分間隔、上書き記録とした。剖検の際にデータロガを回収し、直腸温データをグラフ化し、死後経過時間の推定を行った。宮城県において、平成16年7月から本実験を開始し、その後21ヶ月間で375解剖事例があり、モニタリングは152例で実施された。そのうち有効な直腸温温度曲線が得られたのは103例で、残り49例は測定開始時点で温度が下がりきった状態であった。死後経過時間(死亡時刻)の推定をこれらの事例で行い、鑑定にも取り入れた。たとえば、ある事例では従来型の外部センサー型データロガを併用したが、本法では体動等による影響を受けなかったが、従来型ではその影響をはつきりと確認できた。別の事例では環境温の変化が直腸温に与える影響を記録することができた。本法の利点はデバイスの大きさ(直径17.5mm、厚さ5.9mm)にあり、また直腸への挿入が容易であり、しかも特別な技術を必要としないことにある。これまでに様々な死後経過時間推算アルゴリズムが開発されているが、推算の前提となる測定が正しく行われ、信頼性が高いものでなくてはならない。直腸内留置型である本法を利用することにより、信頼性・正確性を確保することができる。死体の温度動態を良く近似できるとされている2指数関数を用いる場合でも、連続データから抽出した値を用いるべきであろう。本法はこの目的にもかなっており、実務において有効な方法であることが証明された。さらに本研究では今回行った宮城県だけではなく、他地区での導入の助けとなるよう具体的にその方法を提示した。
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