研究概要 |
エタノール(EtOH)はアルコール脱水素酵素によりアルデヒド,さらに酢酸へと代謝されるが,一部はグルクロン酸抱合を受けてエチルグルクロナイドになる.エチルグルクロナイドはエタノールより長期にわたり検出し得るといわれている.本年度はこのエチルグルクロナイドを検出する方法を検討した.このグルクロン酸抱合体を測定するためには,直接これを測定する方法と,血液等の試料をグルクロニダーゼ処理し,遊離したエタノールをGCのヘッドスペース法にて測定し,未処理の値を差し引く事により算出する方法がある.そこで,今回はグルクロニダーゼ処理の時間を種々検討した.救命救急センターの試料でエタノールが検出された血液試料にグルクロニダーゼを作用させ,54℃で時間を追って5時間後までサンプリングを行い,遊離したエタノールをGCのヘッドスペース法で測定し適切な作用時間を検討した.また,メタンフェタミン(MA)も肝臓の薬物代謝酵素によりアンフェタミン(AP),それぞれのパラハイドロキシメタンフェタミン(MAOH),パラハイドロキシアンフェタミン(APOH)に代謝され,これらがグルクロン酸抱合を受ける.そこで救命救急センターの試料で覚醒剤が検出された試料を用いて,同様にグルクロニダーゼを作用させ,濃度が一定になる条件を検討した.MAとその代謝物はメトキシフェナミンを内標(IS)にして,Bond Elut Certifyにて精製後,無水trifluoroacetyl酢酸で60℃20分間誘導体化後,GC/MSにて測定した.カラムはVF-5ms 30m×0.25mm,膜厚0.25μm(Varian製),温度は80℃で1分保持後20℃/分で300℃まで昇温した.測定モードはSIM(selected ion monitoring)で行い,MAはm/z154,118,APはm/z 140,118,MAOHはm/z 154,230,APOHはm/z 140,230,ISはm/z 154,148のイオンを用いた.EtOH及びMAいずれもグルクロニダーゼを4時間作用させる事により,良好な成績が得られた.この確立した方法を用いてさらに動物実験を行って行く.
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