研究概要 |
エタノールはアルコール脱水素酵素によりアルデヒド,さらに酢酸へと代謝されるが,一部はグルクロン酸抱合を受けてエチルグルクロナイドになる.エチルグルクロナイドはエタノールより長期にわたり検出し得るといわれている.本年度も引き続きエチルグルクロナイドを検出する方法を検討した.このグルクロン酸抱合体を測定するためには,直接これを測定する方法と,血液等の試料をグルクロニダーゼ処理し,遊離したエタノールをGCのヘッドスペース法にて測定し,トータルエタノールとして算出する方法がある.前回は救命救急センターの試料をグルクロニダーゼ処理することによりエタノールおよびメタンフェタミンの代謝物に対し良好な成績が得られ,グルクロニダーゼ処理による測定条件を確立した.そこで今回は直接測定するため,エチルグルクロナイドを製薬会社に合成させGC/MSによる測定条件を種々検討した.エチルグルクナイドをメタノールに溶解しmg/mlの溶液を作成した.その10μgを取り,窒素気流下で乾燥後,ピリジン+BSTFA(1:1)100μ1,90℃30分でTMS化を行いGC/MSにて測定した.カラムはVF-5ms 30m×0.25mm,膜厚0.25μm(Varian製),温度は80℃で1分保持後20℃/分で300℃まで昇温した.測定モードはスキャンで行った.その結果TMS-エチルグルクロナイドは保持時間10.6分に検出され,m/z217をベースピークとするマスクロマトグラムが得られた.次いで,救命救急センターでエタノールが検出された血液,尿試料をメタノールで抽出後,前記と同様の処理を行いGC/MSにて測定した.飲酒例においては標準のエチルグルクロナイドの保持時間と一致したピークから標準品と一致したマスクロマトトグラムが得られた.このように,エチルグルクリナイドを測定することにより飲酒の証明が可能となった.今後この確立した方法を用いて,どの程度まで飲酒を証明できるか,腐敗の影響,覚せい剤との併用の影響等の動物実験を行って行く予定である.
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